雑学Vol.14「サンスクリーン」vs「薬剤師」

これから夏本番!サンスクリーンの基礎知識

こんにちは、薬剤師の黒岩です。
本日は、サンスクリーン(日焼け止め)について解説します。

紫外線の種類は2つ!
紫外線には、A波(UV-A)B波(UV-B)の2種類あります。厳密には、C波(UV-C)というのもありますが、これはオゾン層に吸収されて地上に届くことはないので、気にしなくてよいでしょう。

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A波(UV-A)は、皮膚の表皮を通り過ぎ、真皮にまで影響を与えます。急激な変化を与えない代わりに、じわじわと肌内部のコラーゲンやエラスチンを破壊していくため、弾力が低下して、シワやたるみの原因となります。
対して、B波(UV-B)は、真皮には到達しませんが、表皮に赤い炎症を起こしたり、メラニン色素を沈着させてシミの原因となったりします。

短期的な影響でみるとB波(UV-B)ですが、将来の肌のことも考えるとA波(UV-A)もB波(UV-B)も共にブロックする必要があります。
SPFとPA
サンスクリーン(日焼け止め)を探していると、SPFPAの表示を見かけることと思います。これらは一体なにを意味しているのでしょうか?

SPFは、サンプロテクションファクター(Sun Protection Factor)の略で、B波(UV-B)を防ぐ効果の強さをあらわしています。B波(UV-B)が肌にあたりだしてから日焼けをするまでの時間を何倍に遅らせるかの目安であり、たとえばSPF30の場合、B波(UV-B)の影響を30倍遅らせることができます。数字が大きいほど強く、最高値は50です。50を超える製品は、SPF50+と表示されます。

PAは、プロテクショングレード・オブ・ユーブイエー(Protection Grade of UVA)の略で、A波(UV-A)を防ぐ効果の強さをあらわしています。+から+++の3段階があり、+++が最もA波(UV-A)の防止効果が高いです。
サンスクリーン(日焼け止め)の正しい塗り方
先ほどのSPFやPAの効果表示は、サンスクリーン(日焼け止め)を肌に1cm2あたり2mgまたは、液体の場合2マイクロリットルを塗った場合の効果です。SPF/PAの高いサンスクリーン(日焼け止め)を塗っているのに、使用量が不十分で、充分な日焼け止め効果が発揮できていないケースが目立ちます。

顔に塗る場合は、真珠の玉2個分を全体に伸ばし、3時間程度でこまめに塗りなおすのが理想です。
使用量
紫外線散乱剤と紫外線吸収剤
サンスクリーン(日焼け止め)に配合されている成分には、紫外線散乱剤紫外線吸収剤の2種類あります。
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▼紫外線散乱剤の成分
酸化チタン(Titanium Dioxide)
酸化亜鉛(Zinc Oxide)

紫外線散乱剤は、鏡のように紫外線を反射させることで、肌への影響を防ぎます。B波(UV-B)からA波(UV-A)まで広く遮断することができ、肌にやさしいのが特徴です。

▼紫外線吸収剤の成分
メトキシケイヒ酸オクチル(Ethylhexyl Methoxycinnamate)
ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸オクチル(Ethylhexyl Dimethoxybenzylidene Dioxoimidazolidine Propionate)
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル(Diethylamino Hydroxybenzoyl Hexyl Benzoate)
t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン(Butyl Methoxydibenzoylmethane)
オクチルトリアゾン(Ethylhexyl Triazone)
パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル(Ethylhexyl Methoxycinnamate)

紫外線吸収剤は、化学的な変化で熱などのエネルギーに変換して放出することで、肌に紫外線が浸透するのを防ぎます。特にB波(UV-B)の吸収に優れていますが、強い遮断力の代わりに肌への負担が大きく、稀にかぶれを起こすことがあります。
肌だけでない紫外線の影響
紫外線の影響は、肌だけではありません。眼も急性症状が起きやすい部位の1つです。

スキー場、海水浴場、高山など特に紫外線の反射が強い場所で起きる雪目(ゆきめ)は、結膜(白目)の充血や異物感、流涙(意図せず涙が流れ続ける)、ひどくなると強い眼痛を引き起こします。
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紫外線による眼の影響を抑えるには、サングラスが効果的です。サングラスは、黒などの色が濃いものを着用すると、瞳孔が開いてしまうため、多くの紫外線を吸収してしまいます。充分な紫外線カット効果のある色の薄いサングラスがおすすめです。

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また、眼から紫外線が入ると、肌のメラニン形成を促すこともわかっています。しっかりとサンスクリーン(日焼け止め)を塗っていても、眼が無防備であるために、日焼けしてしまったなんて悲しいですよね。眼の健康だけでなく、肌の日焼けを防ぐためにも、アイケアは欠かせません。
ボルタレンで日焼けする?
肩こり、腰痛、筋肉痛。消炎鎮痛剤と呼ばれるクリームや湿布を使っている人も多いのではないでしょうか。

薬の成分の中には、光線過敏症(かぶれや色素沈着などの皮膚症状)と呼ばれる紫外線への感受性を上げてしまう副作用を引き起こすものがあります。その代表格が、ボルタレンの有効成分であるジクロフェナクや、モーラステープ・オムニードケトプロフェンパップの有効成分であるケトプロフェンです。

光線過敏症を避けるためには、紫外線を避けることや、サンスクリーン(日焼け止め)が有効ですが、オキシベンゾンオクトクリレンの成分に交叉感作(成分の構造が似ているためアレルギー反応を起こすこと)のあることが知られています。サンスクリーン(日焼け止め)を選ぶ際は、オキシベンゾン、オクトクリレンが配合されていないものを選ぶようにしましょう。

ケトプロフェン オキシベンゾン オクトクリレン
左から順に、ケトプロフェン、オキシベンゾン、オクトクリレン。構造が似ているため交叉感作を起こす。

また、ジクロフェナクやケトプロフェン以外の消炎鎮痛剤(NSAIDs)でも光線過敏症の副作用が出る場合があります。これら光線過敏症を引き起こす可能性のある薬を使用した場合は、使用を中止した後も4週間は紫外線対策を念入りにするようにお気を付けください。

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