雑学Vol.12「ヒルドイド」vs「薬剤師」

美容目的で使われる医薬品とは?

こんにちは、ケミスト黒岩です。本日は、最近話題になっているヒルドイドをはじめとした美容に使われる医薬品をご紹介します。 連日の報道で、すっかり浸透したヒルドイドという名前ですが、実はヒルドイドには色々な種類があるのをご存知ですか。 ヒルドイドクリーム0.3% 伸びがよい水中油型のクリーム剤 ヒルドイドソフト軟膏0.3% 伸びがよく被覆性のある油中水型のクリーム剤 ヒルドイドローション0.3% 伸びがよく、広範な患部に使いやすいローション剤 ヒルドイドゲル0.3% 清涼感が得られるゲル剤 ヒルドイド使い分け これら4つは、有効成分のヘパリン類似物質とその濃度は同じですが、剤形が異なります。それぞれ使用感に特徴がありますので、使用部位や季節などに応じて使い分けます。 ヒルドイドクリーム0.3%ヒルドイドソフト軟膏0.3%はどちらもクリーム剤です。 被覆性・使用感のバランスが取れていて年間を通じて使用されるヒルドイドクリーム0.3%に対して、油分の多いヒルドイドソフト軟膏0.3%は秋から冬の乾燥期に好まれます。 副作用も少なく、多くの方にお使いいただけますが、血行を促しますので出血性血液疾患のある方や、出血している部位には使わないでください。 hirudoid 報道で問題となっているのは、ヒルドイドの不適切処方であり、ヒルドイドそのものに問題はありません。 日本の健康保険制度は、医療給付の対象を病気やケガなどと限定していますので、美容目的で健康保険を使うことはできないのです。ヒルドイドを美容目的で使用したい方は、自費での処方を受けるか、薬局・ドラッグストアにある市販薬(ヘパリン類似物質)、または個人輸入をご検討ください。 海外のヒルドイドには、国内版よりも高濃度なヘパリン類似物質0.445%のクリームがありますよ。 トランサミン さて、ヒルドイドばかり話題になっていますが、実は美容目的で不適切に処方されている薬はほかにもあります。肝斑治療薬のトランシーノで一躍有名になったトラネキサム酸もその1つです。 先日、トラネキサム酸の服用量についてご相談を受けたのでご紹介します。 トラネキサム酸の服用量は添付文書(薬の説明書)に dosage とあります。 750~2000mgと幅があるので、1日どのくらい飲めばよいか悩む方が多いようです。 (ちなみに、海外の添付文書では、1日750~1500mgが通常量と記載されています。) 医師に指示された服用量で飲んでいただくことになりますが、肝斑の治療では1日1500mgで処方する医師が多いです。 「今日の治療指針」という専門書にも、そばかす(雀卵斑)・肝斑への処方例として、 トランサミン錠(250mg) 1回2錠 1日3回 毎食後 と記載されています。 高用量ですと一過性の副作用として下痢があらわれることがありますが、通常、徐々に改善されます。もし下痢が続いたり増強したりする場合は、服用量を減らすか、服用の中止を検討する必要がありますので、医師・薬剤師に相談しましょう。 また、トラネキサム酸の休薬期間についても多くの方が心配されますが、継続して服用いただいて構いません。 ただし、トラネキサム酸は血栓を安定化させる作用があるので、脳血栓、心筋梗塞、血栓性静脈炎などの既往や、血栓症があらわれる恐れのある方は、注意が必要です。 具体的な例でいうと、女性ホルモン製剤(低用量ピル)を服用している方は、トラネキサム酸は服用しない方がよいでしょう。 これは、女性ホルモン製剤(低用量ピル)に易血栓形成傾向があり、トラネキサム酸がこの血栓を安定化させてしまうためです。 トラネキサム酸単独でも肝斑への効果はありますが、より早く効果を出したい方には、シナール配合顆粒などのビタミンC製剤と、ハイドロキノン外用を併用するのがおすすめです。 ほかにも、トラネキサム酸と桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)との併用が肝斑治療に有用との報告があります。 肝斑治療における、トラネキサム酸と桂枝茯苓丸の併用療法について これらの薬は美容目的の場合、健康保険が使えません。日本の健康保険制度は、世界でも稀に見る優れた制度です。将来にわたってこの制度を維持するために、国民一人ひとりが真摯に向き合う必要がありそうですね。

この記事をシェアする

ページ上部へ戻る