みなさん!こんにちは。薬剤師・ケミスト黒岩です。今日から3月!だんだんと暖かくなってきますね。
この時期になると、花粉症や紫外線(UV)を気にし始める方も少なくないでしょう。今回は、紫外線(UV)対策や美白肌の鉄板ともいえるトラネキサム酸について解説します。
トラネキサム酸の効く仕組み
市販薬の
トランシーノで一躍有名になった有効成分が、
トラネキサム酸です。トラネキサム酸は
肝斑の治療薬ですが、今では薬用化粧水の有効成分として使われるなど肝斑以外の美白にも応用がされています。
さて、トラネキサム酸が肝斑に効く仕組みですが、メラニンをつくるメラノサイトを活性化させる
プラスミンという酵素を邪魔します。
このプラスミンという酵素は、メラニンの産生だけでなく、
血栓(かさぶた)の溶解や、
アレルギー・炎症の原因となる物質の産生にも関わっています。したがって、トラネキサム酸には、血栓(かさぶた)の溶解を抑えて安定化させたり、アレルギー・炎症の原因物質の産生を抑えて症状を改善したりする働きもあります。
トラネキサム酸を飲むと血栓ができやすくなるとよく聞きますが、正確には、
一度形成された血栓が安定化して溶解されにくくなるです。これについては、心筋梗塞などの血栓のある方、凝固障害などの血液疾患をお持ちの方、低用量ピルを服用している方以外は、過度に心配する必要はないでしょう。
また、トラネキサム酸はアレルギー・炎症を抑える働きがあるため、風邪薬にも配合されていることがあります。トラネキサム酸を肝斑治療で毎日飲んでいる方は、風邪薬を買うときに成分が重複しないよう薬剤師に相談することをおすすめします。
トラネキサム酸の副作用
さて、そんな多機能なトラネキサム酸ですが、医薬品ですので当然副作用もあります。頻度として比較的多いのが、
食欲不振、悪心、嘔吐、下痢、胸やけなどの消化器症状です。
飲み始めて早々このような副作用が出ると心配されると思いますが、
飲み続けることで徐々に改善されることが多いです。トラネキサム酸の服用量が多いと、これら消化器症状の頻度が上がることがわかっていますので、なかなか改善されない場合は
1日服用量の減量を検討するのがよいでしょう。
肝斑治療では、トラネキサム酸を
1日量1500mgで処方することが多いですが、
1日量750mgまで減らすなど、医師にご相談ください。
ちなみに、
海外の臨床試験では、
1日量500mgでの肝斑への有効性が確認されています。
トラネキサム酸以外に、
シナール配合錠(ビタミンC・パントテン酸)を同時に処方することがあります。消化器症状の原因は、トラネキサム酸よりもかえってビタミンCの方ということも考えられます。トラネキサム酸を減量しても副作用が治まらない場合は、
シナール配合錠(ビタミンC・パントテン酸)をいったん休薬するのも手です。
ビタミンCといえば、この話題!
最近、
ビタミンCを朝に摂るとシミができやすくなるから避けたほうがよい?という話を耳にします。
でも、これは
まったくの誤解です。
ビタミンCには、抗酸化作用をはじめ、メラニン色素の生成を抑えたり、免疫力を高めたりする働きがあります。ビタミンCは水溶性のビタミンですので、一度に大量に摂ると吸収できない分は尿として排出されてしまいます。むしろ、朝・昼・夜とこまめに摂取したほうが有用なのです。最近では、身体の中で徐々に成分が溶け出すような特殊な構造をしたサプリメント(健康食品)もあります。
ただし、ビタミンCを朝、フルーツから摂るのは避けたほうがよいかもしれません。レモンやグレープフルーツ、オレンジなどの
柑橘系果物は、ビタミンが豊富ですが、
ソラレンという光毒性物質も含まれているのです。このソラレンは、光の感受性を上げてしまうので、
朝に摂ると紫外線の吸収を促進してしまいます。こういったフルーツは、紫外線の影響が少ない、夕方や夜に摂取するのがおすすめですよ。