筋肉は裏切らない!けどドーピングには気を付けて

こんにちは。薬剤師の鈴木です。

筋トレブームと言われて久しいですが、今年は「コロナ太り」の反動もあってか、例年以上に老若男女問わず筋トレに勤しんだ1年ではなかったでしょうか?
そこで今回は、筋トレやスポーツと関連が深い「ドーピング」についてお話したいと思います。

ドーピングってなに?

ドーピングは、「スポーツにおいて禁止されている物質や方法によって競技能力を高め、意図的に自分だけが優位に立ち、勝利を得ようとする行為」(日本アンチ・ドーピング機構)などと定義される、競技スポーツ界での禁止行為です。

先月逝去され多くの人が悼んだ不世出のサッカー選手・マラドーナや、今年2月に現役を引退したテニスの元世界女王・シャラポワも、過去にドーピング違反で制裁を受けています。

フェアプレーが大前提の競技スポーツにおいて、薬物などの力を借りることは言うまでもなくアンフェアです。他の選手の士気を下げたり競技そのものの価値を損ねたりしかねないため、競技スポーツ界でドーピングは厳しく取り締まりされています。

どんな薬がひっかかる?

「ドーピング」と聞くと、ムキムキマッチョのボディビルダーのイメージが湧きませんか?

筋肉を増強させる薬が禁止されているイメージが強いと思いますが、実際には他にも色々なジャンルの薬が禁止物質に指定されています。

◇蛋白同化薬(ステロイド系、非ステロイド系)
◇ペプチドホルモン、成長因子
◇ベータ 2 作用薬、ベータ遮断薬
◇ホルモン調節薬、代謝調節薬
◇利尿薬、隠ぺい薬
◇興奮薬、麻薬、カンナビノイド(大麻製品)

世界アンチ・ドーピング機構ではこのように、競技スポーツにおいて使用を禁止する成分を明確に定めており、毎年更新されています。

スポーツの能力向上に寄与する作用は筋肉増強以外にも、瞬発力集中力を上げたり、肺活量を増やしたり、プレッシャーを解いたりと多岐にわたるため、どれを助けるような成分も禁止されているのです。

うっかりドーピングにも注意

多くの成分が競技スポーツにおいて禁止されていることが分かりましたが、最近よく話題になるのが「うっかりドーピング」です。

先ほどあげたようなジャンルの成分は、ドラッグストアで買える風邪薬やぜんそくの貼り薬、サプリメントなどに含まれているケースもあります。

これらをスポーツ選手が意図せずに摂取して検査に引っ掛かるという事例を「うっかりドーピング」といいます。禁止成分を選手自身で判別するのがとても難しいため、近年は「スポーツファーマシスト」という認定資格を持つ薬剤師などがサポートをしています。

健康長寿のためのドーピング?

最後に、ドーピングのもう一つの側面についてお話したいと思います。

冒頭にもあげた通り、競技スポーツにおいてドーピングが絶対NGであることは疑う余地がありませんが、一般人にとってのドーピングはどうでしょうか?

競技スポーツ界では使用厳禁な蛋白同化ステロイド(アナボリックステロイド)は、実は多くのクリニックで「ホルモン補充療法」として活用されているものでもあります。

というのも、もともと身体にそなわる筋肉増強作用(=蛋白同化作用、アナボリック作用)は「男性ホルモン(テストステロン)」が支えています。そしてこれは、20代をピークにどんどん下がっていきます。
中年の男性が太りやすいのも、このホルモンが減少することで筋肉が落ちていくことが一因です。
小太りになる程度なら許容できるかもしれませんが、男性ホルモンの減少は他にも「イライラ」、「意欲消失」、「性欲減退」、「睡眠障害」などの様々な悪影響につながっています。

また中年を過ぎ高齢になると、男性ホルモン低下による筋肉減少がさらに進み、フレイルサルコペニアといった介護が必要なまでの身体状態につながりかねません。

こうした理由から、アナボリックステロイドを健康長寿のためのドーピングとして使用することもあるのです。

人間の寿命はもともと50年そこらでしたから、衰えるままに生きても支障はありませんでした。
しかし今は「人生100年時代」です。50歳が寿命の時代とは違い、長く生きる分だけ健やかな身体を維持することも大事な課題となるのです。

プロテイン市場の拡大筋トレブームが続いているのも、こうした人類の進化に合わせた結果ともいえます。一般人にとってのドーピングも、このような側面からみると有益なのです。
とはいえ、どんな「クスリ」も「リスク」と表裏一体です。
正しく理解した上で、それらの恩恵を享受することが一番大切だと思います。

それではまたお会いしましょう。

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