お久しぶりです。ケミスト黒岩です。
本日は、いま話題のうがい薬についてです。
イソジンの品切れ
大阪府知事のイソジン会見で、薬局からイソジンが忽然と姿を消してしまいました。
また、それに伴い明治ホールディングスの株価も急騰!
イソジンというとカバくんの印象が強いのですが、ライセンス契約が切れた関係で、今はイソジンとカバくんは別々のうがい薬として展開。
現在、明治が製造している方のうがい薬は、
明治うがい薬という商品名でカバくんと共に売られています。
なので、正確にいうとイソジンと明治ホールディングスは無関係なのですね。
あ、そうそう、イソジンといえば、オオサカ堂もイソジンの海外版である
Betadine(ベタダイン)シリーズの取り扱いを開始しましたので、こちらもよろしくお願いします。
うがい薬で効くならリステリンはどうか
さて、そんなイソジンですが、イソジンがコロナに効くなら、洗口液の
リステリンでもいいんじゃないかと思った次第です。
薬剤師として薬学的な知見からリステリンが効きそうと考えたわけでは全くないです。雰囲気です。だって、リステリンってアルコール感すごくあるし、なんだか効きそうですよね。
調べてみると東京歯科大学の先生が、リステリンは
コロナウイルス(SARS-CoV-2)に有効と考えられるという見解を示しています。
中には、
リステリンがコロナウイルスに有効と言い切っている歯科クリニックも!
その根拠としては、
コロナウイルスと形が似ているインフルエンザウイルスに有効だからということみたいです。
たしかに、コロナウイルスもインフルエンザウイルスも外側を膜(エンベロープ)で覆っている
エンベロープウイルスです。
また、リステリンがインフルエンザに有効というのは事実です。
The antiviral spectrum of Listerine antiseptic
さあ、俄然リステリンが効きそうな気がしてきたので、リステリンの製造販売元の
ジョンソン・エンド・ジョンソンの公式見解をみてみましょう。
Q. マウスウォッシュブランドのリステリン®には殺菌効果がある製品があるようです。新型コロナウイルス感染症の原因菌を死滅させる効果はありますか?
A. いいえ。
リステリン®マウスウォッシュはコロナウイルス株に対する試験を一切行っていません。リステリン®マウスウォッシュは手指の消毒剤または表面の殺菌剤としての使用を意図しておらず、それに対して有益とは思われません。
LISTERINE®.COM 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)最新情報
https://www.listerine-jp.com/covid-19-update
あれ?有益ではないとありますね。
たしかにウイルスの形が似ているだけで、コロナウイルスで実際に試験したわけじゃないので有効とは断言できません。
Q. リステリン®マウスウォッシュにはアルコールが含まれているので、手指の消毒剤や表面の殺菌剤として使用できますか?
A. いいえ。
アメリカ疾病管理予防センター(CDC)では、感染予防としてアルコール含有量が60%以上の手指消毒剤の使用を推奨しています。リステリン洗口剤の中にはアルコールが含まれているものもありますが、アルコールが含まれている場合は20%程度です。リステリン®は手指の消毒剤または表面の殺菌剤としての使用を意図しておらず、それに対して有益とは思われません。
LISTERINE USAGE GUIDELINES AND COVID-19 OUTBREAK
https://www.listerine.com/covid-19-update
口の中に入れるとあんなにピリピリするリステリンですが、
アルコール濃度は20%ほどでウイルスを殺すほど高濃度のアルコールではありませんでした。
また、もし仮にコロナウイルスに有効だとしてもそれは口の中にあるウイルスを殺すだけに過ぎません。
したがって、リステリンがコロナウイルスに効く効かないかはさておき、うがい薬の使用は、これから自分がコロナウイルスに感染するのを予防するというよりも、もし自分が保菌者(ウイルスに感染している)だった場合に他者へ移してしまうリスクを軽減できるかもしれない程度に捉えておいた方が良いでしょう。
イソジンの副作用
イソジンについては、副作用を見落とせません。
ポビドンヨードを含むイソジンでのうがいは、長期的に使用していると甲状腺の機能に影響を与える場合があります。
また、妊婦さんは胎児への影響を考えてヨウ素の摂取量に制限がありますので、やみくもにヨウ素系うがい薬でうがいするのは避けるべきです。
厚生労働省の
「日本人の食事摂取基準(2020年版)妊婦・授乳婦」では、
ヨードの妊婦の耐用上限量を2,200μgとしています。
耐容上限量は、この値を超えて摂取した場合、過剰摂取による健康障害が発生するリスクがゼロではなくなることを示す値です。
リステリンであれば長期使用による特有の副作用はありませんし、妊婦さんでも使用できます。
妊婦さんで、アルコール(エタノール)が気になる方は、
アルコールなしのリステリンを選ぶと良いでしょう。
特に妊娠中は、女性ホルモンの増大により血流が刺激され、歯ぐきの腫れや出血が起こりやすくなり(
妊娠性歯肉炎)、歯周病にかかると胎児にも影響を与えます。満足に歯磨きができないときに、リステリンのような洗口液はオーラルケアの助けになるので積極的に使っていきましょう。
海外版リステリンの違い
リステリンなら薬局やドラッグストアにあるなあと思ったそこのアナタ!
実は海外版のリステリンと、日本のリステリンに違いがあるのをご存知ですか?
海外版リステリンには、
フッ素が入っています。
有効成分
フッ化ナトリウム(フッ素)は日本だと
エフコートなどごく一部の商品にしか配合されていません。値段も高価です。
容量250mLで、希望小売価格(税抜)は1,000円。
https://jp.sunstar.com/oralcare/butler/product_001.html
フッ素の濃度を比較
海外版リステリンと
エフコート、フッ素の濃度を比べてみましょう。
エフコートの濃度は、
1mL中フッ化ナトリウム0.5mg(フッ化物イオンとして225ppm)とあります。
ppmというのは、parts per millionの略で
100万分の1という意味です。
225ppmは
0.0225%と同じですね。
対して、オオサカ堂の
リステリンNo.6
ラベルを読むと、
2x fluoride for cavity prevention (vs Listerine products containing 100ppm fluoride)
フッ素濃度は、
200ppmと表示があります。フッ素200ppmをフッ化ナトリウムに換算すると、
1mL中0.44mgとなります。
う~ん、惜しい。「エフコート」の濃度にはわずか25ppm及びませんでした。
しかしながら、
濃度100ppmでも虫歯の予防効果が認められるという報告があるため、
リステリンの200ppmでも十分だと思います。
フッ素濃度100ppmおよび250ppmのフッ化物洗口液のエナメル質におよぼす影響について
ということで、本日はオオサカ堂のリステリンにはフッ素が入ってるというお話でした。