こんにちは、ケミスト黒岩です。本日は、男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版についてご紹介します。
男性型脱毛症診療ガイドライン(長いので以下、AGA診療ガイドライン)は、2010年版からしばらく更新されていませんでしたが、今月20日、2017年版が公開されました。
2017年版のAGA診療ガイドラインは、日本皮膚科学会のサイトでご覧いただけます。
診療ガイドライン
さて、そもそも診療ガイドラインとは・・・
巷には根拠のない治療法、いわゆる民間療法があふれています。「みかんで育毛」「薄毛にはアロエが効く」などなど、本当に効くのかもしれないし、効かないのかもしれない。そんな時に判断基準となるのが
診療ガイドラインであり、根拠のある治療を行なう上で欠かせない存在です。
「診療ガイドライン」とは、症状ごとに適切な処置方法を科学的根拠に基づき専門家がまとめた指針です。「診療ガイドライン」に示されているのはあくまで一般的な診療方法であるため、必ずしも個々の症状に適するとは限りませんが、多くの方に効果のある基準となる治療法といえるでしょう。
2017年版の変更点
2017年版の目玉成分としては、
デュタステリド、アデノシンが挙げられます。
デュタステリドは、男性型脱毛症(AGA)治療薬としての承認が2015年ですので、2010年版では記載がありませんでしたが、2017年版では男性型脱毛症(AGA)での
推奨度A(行うよう強く勧める)となっています。
また、
アデノシンが、男性型脱毛症(AGA)での
推奨度C1(行ってもよい)から
推奨度B(行うよう勧める)にアップしています。
デュタステリド
まずは、
デュタステリド。男性型脱毛症(AGA)での
推奨度A(行うよう強く勧める)です。
商品名は、
ザガーロカプセル、アボルブカプセルですね。アボルブカプセルは前立腺肥大症の治療薬ですが、成分が同じなので、男性型脱毛症(AGA)治療に処方しているクリニックも多くみられます。
デュタステリドもフィナステリド(プロペシア)と同じ5α還元酵素阻害薬ではありますが、フィナステリド(プロペシア)が5α還元酵素Ⅱ型しか阻害しないのに対して、デュタステリドは
5α還元酵素のⅠ型とⅡ型の両方を阻害します。
実際にフィナステリド(プロペシア)よりも効果があるのかという点については、
今後さらなる検討を要するとはなっていますが、6ヶ月の臨床試験で全毛髪数と毛直径の増加において、デュタステリドの方が優れていたという
結果があります。
アデノシン
さて、次は
アデノシンです。先ほどのデュタステリドはいわば想定内。しかし、こちらのアデノシンは少々意外でした。男性型脱毛症(AGA)での
推奨度C1(行ってもよい)から
推奨度B(行うよう勧める)へのアップです。
アデノシンは、資生堂が長年研究している日本発祥の医薬部外品成分です。
血行促進、発毛促進因子の産生、毛髪の成長期延長といった3つの効果で、髪の成長を後押しします。
2010年版ではアデノシンの有効性を検証した論文が1つしかなく、その有効性を示す根拠は弱いとされていましたが、2017年版では3つの論文を検証した結果、
有効性を示す十分な根拠があるとされています。
アデノシン0.75%配合ローションを6ヶ月使用した臨床試験では、80.4%の男性型脱毛症(AGA)患者に中等度以上の改善がありました。(毛髪径・軟毛率・太毛率)
さらには、
アデノシン0.75%配合ローションとミノキシジル5%ローションの比較(太毛率)において、有意差(統計学的に偶然とは考えられない差異)がなく、男性型脱毛症(AGA)に対して同等の有用性が示唆されています。
ちなみに、ミノキシジルの外用剤は、2010年版から引き続き2017年版でも
推奨度A(行うよう強く勧める)です。男性型脱毛症(AGA)ではミノキシジル濃度5%、女性型脱毛症ではミノキシジル濃度1%がつよく推奨されています。
まとめ
今回のAGA診療ガイドライン改定で、デュタステリドやアデノシンを使っている方は、より安心して治療を継続できるのではないでしょうか。
医療の進歩は日進月歩です。今回のアデノシンのように、2017年現在では有効性が十分に確認されていない成分も、次回の改定では推奨される可能性もあります。ぜひ医師・薬剤師と相談して、ご自身にあった成分を見つけて根気強く治療を継続してください。