雑学vol.20 「ソーシャル・ジェットラグ」vs「薬剤師」

~15兆円を取り戻すために、今日からできること~

こんにちは。薬剤師の鈴木です。
1年で最も昼が長い「夏至」を過ぎ、本格的な暑さを迎えるシーズンになってきました。
これから納涼会や花火大会など、夏の宵を楽しむ人も多いのではないでしょうか。

それはさておき、今回はソーシャル・ジェットラグについてのお話です。
私も最近知った言葉ですが、キーワードは15兆円。お金の話?
いいえ、これは睡眠のお話です。(薬学とはあまり関係ありません)

増え続けるソーシャル・ジェットラグ
ソーシャル・ジェットラグとは、社会的時差ボケとも表わされます。

“平日は遅寝早起きで睡眠不足だから、週末は思う存分朝寝坊して寝不足解消!”
と思って沢山寝たら、寝だめした週明けにかえって身体がダルくなってしまった…という経験はありませんか?

これがソーシャル・ジェットラグと呼ばれ、少々問題なのです。

ソーシャル・ジェットラグは、『仕事(家事)や学校など社会的制約がある平日の睡眠と、体内時計(概日リズム)にあわせた制約のない休日の睡眠との間に起こるを指してドイツの生物学者、Till Roenneberg教授が提唱した概念です。

日本人では、約7割の人が経験しており、特に若い人ほど多いそうです。また世界的にも増える傾向にあるそうです。

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あなたの時差ボケは何時間?
ソーシャル・ジェットラグは簡単に計算できます。

例えば一般的なサラリーマン(私の事です)が、平日は7時起床/24時就寝の生活をしており、休日は11時半起床/深夜1時半就寝の生活をした場合のソーシャル・ジェットラグはどのくらいでしょうか。

平日の睡眠(7時間)の中央時刻は午前3時半で、休日の睡眠(10時間)の中央時刻は午前6時半です。したがって、ソーシャル・ジェットラグは(午前6時半-午前3時半)3時間となります。

時差3時間がどの程度なのかイメージしづらい気もしますが、おおよそ日本とインドの時差に相当します。つまり週末トリップでインドに旅行し、月曜日からまた普段通り働いているような身体的負荷が理論的には生じていることになるのです。

一見すると、平日7時間/休日10時間と十分な睡眠時間が取れているのに、心身には負荷がかかっているのです。
我ながらこれはいけないなと思いました。

また睡眠時間が短くて、なおかつソーシャル・ジェットラグが長い人は、さらに負荷が大きくなるため要注意です!
15兆円の経済的損失
15兆円とは、2016年にランド研究所により発表されたレポートの数字です。

睡眠が不足することにより起こる「病気などで働き手が減る」、「日中の生産性が落ちる」といった問題を具体的に試算して、”睡眠時間が6時間未満の人が7時間の睡眠をとった場合に改善される経済的損失”を数値化した結果、日本はGDPの2.92%にあたる約15兆円が改善されるというものでした。
この損失割合はカナダ、アメリカ、イギリス、ドイツ、日本の対象5か国の中でワースト1位でもありました。

このことを受けて、2017年に「睡眠負債」という言葉が流行語にノミネートされて早2年。
もともと真面目で仕事熱心な気質の強い日本人。
睡眠負債を返済する一心で休日の寝だめをした結果、今度はソーシャル・ジェットラグという課題に直面してしまったのです。

ちなみにソーシャル・ジェットラグは15兆円の損失とは直接関わってはいませんが、いくつもの問題点が既に明らかになっています。

例えば土日に寝だめをした人は、土日も平日通りの睡眠をとった人に比べて、日中の眠気と疲労感が強いという結果が出ています。
またこれは、週明け前半までズルズルと影響してしまうことも分かっています。

他にも、ソーシャル・ジェットラグが長い人ほど肥満やメタボ率が高いことや、ソーシャル・ジェットラグが学業成績の低下に関与していること、さらにはうつ病や精神機能の低下など、さまざまな健康リスクが高まることが指摘されています。

具体的な試算はされていませんが、これだけのデメリットがあれば経済的損失も睡眠負債に負けず劣らず影響がありそうです。

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今日からできること
ソーシャル・ジェットラグが問題視されてから、人間の睡眠は質と量の両方が整っていないと健康リスクを回避できないこと分かったのです。
つまり良い睡眠は、適切な睡眠時間ギャップのない睡眠習慣がポイントともいえます。

はじめに、適切な睡眠時間についてです。
理想の睡眠時間は、一般的には7~8時間といわれていますが実際には一人ひとり異なります。加齢とともに眠り続けられる時間は減ることも分かっています。そのため60歳以降では6時間程度の睡眠が適量ともいわれています。
またショートスリーパーロングスリーパーといわれるような人達が一定数いますが、これらは生まれつきの体質であり、訓練して身につくものではないそうです。
したがって適切な睡眠時間は、自分自身が「日中に眠くなることもなく快適に過ごせているかどうか」をポイントにして探ってみると良いでしょう。

次に、ギャップのない睡眠習慣についてです。
今日からできることとしては、3つ挙げてみます。

ひとつ目は、寝だめをやめることです。
目安としては、時間の制約がない週末でも平日と比べて起床時刻が2時間以上開かないようにしましょう。平日7時に起床している人は、週末は遅くとも9時には起床するのです。
また逆算して、その起床時刻で満足な睡眠時間がとれる時間に就寝するようにしましょう。

二つ目は、普段から寝不足を溜めないことです。
そもそも寝だめというのは、日ごろの睡眠時間が足りてないためにやってしまう習慣です。就寝時間を毎日たった30分早めるだけでも、平日の睡眠時間は計2.5時間増えます。ちりつもだと思って、平日の睡眠時間をほんの少しでも増やしてみましょう。
どうしても夜に睡眠時間を取れない人は、お昼休憩中の15分睡眠がおススメです。15分でぐっすり眠るのはなかなか難しいですが、習慣化すると15分目を閉じているだけでも体力と気力がチャージされます。

三つ目は、夜スマホをやめることです。
これが一番効果的ではないかと個人的には思います。夜ベッドに横たわってからうっかりスマホを開いたら最後、気が付いたら1時間経ってしまったという経験はありませんか?
平日の睡眠時間がこうして削られている人は多いと思います。

ひとたびブルーライトにさらされると、せっかく分泌するはずだったメラトニンも出なくなり、睡眠の質は大幅に低下します。
ついスマホを手に取ってしまう人は、充電器を寝室の外にセットしてベッドサイドには持ち込まないようにすると良いでしょう。

また「寝ながらテレビ」もスマホと同じく悪影響なので気を付けましょう。

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ソーシャルな対策にも期待
ソーシャル・ジェットラグはその名前にも表れているように、一種の社会的な問題でもあります。つまり、そもそも現代社会のしくみが概日リズムに合っていないのです。

例えば生物学的には、幼少期に比べて思春期以降の方が概日リズムは夜型化するといわれています。そのため育ち盛りで睡眠も沢山必要な中高生にとって、朝早くから授業を受けなければいけない社会システムは合っていないのです。大学生や社会人においても同様です。
これを受けてアメリカの一部の学校ではLater School Start Times(始業時間を遅らせる制度)が導入されています。

またごく一部の企業では、出社時間を遅らせる仮眠の時間を設けるなどの取り組みが始まっているのだそうです。
睡眠の問題が経済的に大きなダメージをもたらすことを考えれば、こういった社会的な制度は長期投資になるかも知れませんね。

とはいえ、日本の社会がソーシャル・ジェットラグの改善に向けて動き出すのはまだ先になりそうなので、まずは個人で出来ることからはじめていきましょう。
ひとり一人が意識することで、日本の経済は大きく回復できるかも知れません。なにより、自分の健康を守ることにつながります♪

さしずめ私は、休日の11時半起床と夜スマホを改めることにします。
イベントも多くてついつい夜更かししがちな季節ですが、毎日の睡眠も大事にしていきましょう♪


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