雑学vol.18 「便秘」vs「薬剤師」続々編

便秘薬って沢山あるけど、何が違うの!?

こんにちは。薬剤師の鈴木です。今日のテーマは、またしても便秘です!
一体いつまでうんちの話をするのかい!というツッコミも聞こえてきそうですが、最後までどうぞお付き合いくださいね♪

うんちが出やすい姿勢の話(雑学vol.8「便秘」vs「薬剤師」)、うんちが出やすいライフスタイルの話と来て、今回はやっとお薬の話です。
薬剤師の視点を交えながら、便秘薬についての耳よりな情報をお届けできればと思います!

おさらい「便秘」とは
「便秘」の定義は「本来体外へ排出すべき糞便 を十分量かつ快適に排出できない状態」といわれています。
便秘は年代によって幅がありますが、だいたい人口の2~27%くらいです。
一般的には女性に特に多いのですが、年齢を重ねるごとに男女とも増えていき80歳を超えると男女差なく約10人に1人が便秘になるようです。

便秘有病率

誰もが抱える悩みだということですね。
ここでいう「便秘」は病名ではありません。誰にでも起こりうる体の状態です。
その便秘の状態によって、具体的に困った症状(例えば、腹痛やお腹の張り、過度のいきみ、いきんでも排便ができない等々)が出てくると「便秘症」としてお薬やその他の方法を用いた治療が必要になってくるわけです。
便秘薬はズバリ2パターン!
実は便秘薬は日本で医療用として認められている成分で数えても20種類以上あります。
市販の便秘薬に至っては数百種類あるのではないでしょうか。ドラッグストアに買いに行っても種類が多すぎて困りますよね。
それぞれの成分に特徴はありますが、ここでは「刺激性」「非刺激性」かの2パターンに分けてみていきたいと思います。

非刺激性下剤
酸化マグネシウム系(マグミット、マグラックス、ミネラートなど)
ジオクチルソジウムスルホサクシネート系(ベンコール、ビーマス、オイルデルなど)
ラクツロース系(モニラックシロップ、ラグノスゼリーなど)
非刺激性下剤は浸透圧性下剤ともいわれる下剤で、便に水分を浸透させて便を柔らかくするはたらきをもつ薬です。
どれも刺激がないため万人に使いやすく、使い続けても耐性(段々効かなくなってくる現象)が起こらないという特徴があります。
酸化マグネシウムはなかでも医療現場で第一選択薬としてまず初めに使用されるお薬です。
ただし酸化マグネシウム系のお薬は成分にマグネシウムを含んでおり、人体ではマグネシウムは腎臓で排泄するため、腎機能が弱っている方は注意する必要があります。

刺激性下剤
漢方系(アローゼン、センノシド、タケダ漢方胃腸薬、ウィズワン、十方便秘薬など)
ビサコジル系(コーラック、スルーラック、ドクソウガン、テレミンソフト坐薬、など)
ピコスルファート系(ラキソベロン、ヨービス、シンラックなど)
こちらはその名の通りですが、大腸や直腸などを刺激して便を押し出すはたらきをもつ薬です。全体的に非刺激性にくらべて作用が強く、腹痛や下痢を伴うケースもあります。
漢方系の多くは、成分としてセンナ、センノシド、ダイオウ、アロエなどが配合されています。また、これらは服用して6~12時間後に排便効果が出るため、寝る前に服用することが多いです。
ピコスルファート系は大腸の内視鏡検査前に大量に服用して、強制的に腸の中を空っぽにするために使用されることがあります。
刺激性の下剤は、あとで詳しくお話しますが頓服で使用するのが原則です。またストレスや自律神経の乱れによって腸がけいれんして便秘になる「けいれん性便秘」には使用できません。
お水をしっかり摂らないと効かない?
非刺激性の中でも特に酸化マグネシウムは便秘薬のファーストチョイスとして大変多くの方が飲んでいる成分ですが意外と見落としがちなのが水分摂取です。
酸化マグネシウムは腸内に水分を引き込み、便に水分を含ませやすくすることで便をやわらかくする薬なので、そもそも水分が足りていない状態だと薬を飲んでも効果を発揮しません。
この成分に限らず、便秘薬を飲む際にはコップ1杯(180ml程度)を目安に水を飲むようにするといいでしょう。

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また薬を飲むとき以外にも、日ごろこまめに水分を摂取したほうが便秘解消につながります。
※持病で水分制限のある方などは医師の指示通りに生活してください。

刺激性下剤の落とし穴
刺激性下剤のなかでも市販薬で手に入りやすいのが漢方系とビサコジル系です。商品名をみてピンとくるものがありませんでしたか?
刺激性の下剤には共通して「耐性」があります。「耐性」というのは、繰り返し使用することで効果が薄れていく性質のことです。初めのうちは良く効くので「これはいい!」と思って使っていくうちに、初めのころのように調子よく効いてこなくなり、それにつれて一度に飲む量も増えてきてしまうケースが多いです。
便秘薬の耐性によって便秘薬の量が増え、結果的に便秘が難治性になっていくケースを「習慣性便秘」とも呼びます。
この習慣性便秘の方が増えてきているそうなのです。心当たりのある方は特に注意です。
医薬品の添付文書にも、このような注意喚起の文章が入っています。

便秘薬添付文書注意喚起
市販の薬は手軽に購入でき、薬剤師から説明を受ける機会も少ないため、このような注意事項には気づかない可能性が高いと思います。生活習慣や食事内容を見直して、お薬以外の便秘治療も行うことが大事ですよ。
また漢方系の下剤に特有の「大腸メラノーシス」にも要注意です。
センナ・ダイオウなどの漢方系下剤を長期間連用することで、成分の色素が大腸の壁に沈着して大腸の働きが弱まる症状です。大腸が黒く染まるため「大腸黒皮病」と呼ばれたりもします。大腸メラノーシスは、原因となる漢方系下剤の使用をやめることで徐々に改善しますが、回復に1年以上かかることもあります。
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便秘を治す薬によって結果的に便秘を悪化させてしまっては本末転倒です。
このようなことにならないように、「刺激性の下剤」は毎日使うのではなく頓服としていざという時だけ使うように心がけることが大切ですね。
まとめ
いかがでしたか。
便秘は多くの人が悩める日常的な症状ですが、なかなか声を大にして人に相談できないものでもありますよね。
本コラムの便秘シリーズがそんな悩める老若男女の助けになれば幸いです♪


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