雑学Vol.16「二日酔い」vs「薬剤師」続編

アスピリンが二日酔いに効く!?

こんにちは、薬剤師の黒岩です。 本日は、雑学Vol.15「二日酔い」vs「薬剤師」に引き続き、二日酔いについて解説します。

二日酔いについておさらい
二日酔いは、アルコールの分解産物であるアセトアルデヒドにより血管が拡張することで、頭痛が起こります。 頭痛のほかにも、吐き気脱水症状も二日酔いの特徴です。 alcohol2拡大表示 日本人は、アルデヒド脱水素酵素(ALDH)活性の弱い人が多いため、白人に比べてお酒が弱いというお話を、前回の雑学Vol.15「二日酔い」vs「薬剤師」でしましたね。 赤ワインは血管拡張作用をもつヒスタミン、チラミンを多く含んでいるため、頭痛が起こりやすいです。対して、白ワインや蒸留酒(ウイスキーやブランデー、泡盛、ラム酒など)はこれらの血管を拡張させる物質が少ないので頭痛が起こりにくいお酒です。 また、コーヒーやお茶を飲むと頭痛が軽くなるのは、カフェインに血管を収縮させる働きがあるためです。
二日酔いになったらアスピリン?
さて、二日酔いになってしまったら、みなさんどうしていますか?つまり、翌朝起きて、頭痛や吐き気がしたときの対処法です。 医学的に確立された治療法というのはありませんが、頭痛の時にまず思いつくのが、解熱鎮痛剤(NSAIDs)ではないでしょうか。 ちょっと古い記事ではありますが、イギリスのデイリー・テレグラフ(The Daily Telegraph)Coffee and an aspirin ‘best hangover cure’という記事が掲載されています。 コーヒーとアスピリンの服用によって、二日酔いの頭痛を緩和した上、脱水症状も引き起こさなかったとあります。 コーヒーには先ほど紹介したように、カフェインに頭痛を抑える働きがありますが、利尿作用があるために二日酔いの脱水症状を助長するとして、一般に二日酔いには避けるべきという意見が優勢です。今回の記事は、それとは逆で、二日酔いにコーヒーは有益であるという内容になっています。 ただし、ラットでの試験ですので、そのままヒトにも当てはまるかは要検討ですね。
そして、こんな論文も…
アスピリンについては、Inhibition of human alcohol and aldehyde dehydrogenases by aspirin and salicylate: Assessment of the effects on first-pass metabolism of ethanolというアルコール脱水素酵素(ADH)アルデヒド脱水素酵素(ALDH)への作用に触れた論文もあります。 ある研究によれば、飲酒の1時間前に100mgのアスピリンを服用したところ、アスピリンを服用していなかった人に比べて、血中アルコール濃度がはるかに高かったという結果が出ています。 aldh拡大表示 これは、アスピリンがアルコールの代謝に必要な酵素(ADH、ALDH)を邪魔するためで、飲酒前にアスピリンを飲むのはむしろ逆効果であることがわかります。
医師の17%が二日酔いにロキソニン?
アスピリンは飲酒前に飲むのは逆効果で、飲酒後に二日酔いの頭痛を抑えるにはおそらく有効であるというのがわかりました。では、アスピリン以外の解熱鎮痛剤(NSAIDs)ではどうでしょうか? こちらも、医学的に確立されているわけではありませんが、17%の医師二日酔い症状の緩和を目的にロキソプロフェンナトリウム(ロキソニン)を服用したことがあると答えたアンケート調査があります。 pict_loxonin-s さて、服用後の気になる結果は… hangover拡大表示 25%ほどの医師がある程度は二日酔いに効果があると考えているようですね。このロキソニンと二日酔いについては、なんとまじめに研究した治験もあります。 結果はまだ公表されていませんが、近い将来、ロキソニンの二日酔いへの効果が証明される日がくるかもしれません。
ケミスト黒岩のまとめ
で、結局、二日酔いには何がいいの?というところですが、ケミスト黒岩の個人的な意見としては、アスピリンよりロキソニンがおすすめです。 二日酔いでは、胃炎を起こしていることも多く、胃粘膜への直接刺激作用のあるアスピリンは負担が大きいと考えるためです。 対して、ロキソニンは、プロドラッグ(体内で吸収されてから活性型に変化し、効果を発揮する)であり、解熱鎮痛剤(NSAIDs)の中では、副作用の胃腸障害が比較的少なく、胃にやさしいのが特徴です。 os1 そして、二日酔いでは脱水症状が起きていますので、OS-1のような経口補水液で水分をこまめに補充して、アルコールを体内から出してあげましょう。 ほかには、吐き気にメトクロプラミド(プリンペラン)、胃痛にファモチジン(ガスター)、解毒作用を促すグルタチオン(タチオン)が適しているでしょう。 item-ippan-014item-ippan-003 また、漢方では、五苓散黄連解毒湯が使われることもあります。

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